チープ テスターで遊んでみよう

その1 テスターの世界への招待

テスターとは、電気の流れを見ることができる道具です。電気は目に見えないので、テスターを使って電気の強さや量や向きを調べることができます。テスターには、針が動くアナログテスターと数字が出るデジタルテスターがあります。針が動くものは、電気の変化がわかりやすいです。数字が出るものは、測定値を液晶画面などで表示し、電気の量などが正確にわかります。テスターで電気を見るときは、赤と黒の棒を使って電気の通り道につなぎます。
テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。

本シリーズでは、特に安価なテスターの利用方法を紹介します。今回はチープテスターの紹介です。

TST-AN501

オーム電機が販売しているアナログテスターです。コンパクトサイズで基本性能を完備した多機能タイプのテスターで、直流電圧、交流電圧、直流電流、抵抗、デシベルなどを測定することができます。電気製品の故障診断や電池の寿命チェックに便利です。単3乾電池×1本で動作し、ピンプラグ式テスト棒が付属しています。価格は約1500円です。
アナログテスターとしてはとにかく安くて、日本語表記ということもあり使いやすいです。精度は個体差かもしれませんが、カタログ値よりも低めの印象です。

①メータ針
②メータ0位調整ネジ
③0Ω調整ツマミ
④目盛版
⑤レンジ切り替えスイッチ
⑥+入力端子
⑦ー入力端子

DT-830B

DT-830Bは、小型でコンパクトなデジタルマルチメーターです。液晶ディスプレイには3桁プラスアルファ(3.5桁)の数字と小数点が表示される、1999カウントテスターです。カウントというのは、デジタルマルチメーターの精度を表すために使用される用語です。カウント数が大きいほど、測定の精度が向上します。例えば、1999カウントのマルチメーターは、200V以上の電圧を測定すると0.1Vの桁は測定できません。このようにフル4桁表示できないものは「3.5桁(3 1/2桁)と記載されることがあります。今日では、デジタルマルチメーターを桁数で分類するよりも、総カウント数で分類することが一般的です。
測定対象の選択や測定上限値に合った測定レンジはマニュアルで切り替える必要がありますが、計測不能などのオーバーレンジの場合は「1」が表示されて知らせてくれます。

DT-830Bは、電圧、電流、抵抗の測定だけでなく、ダイオードテストやトランジスタhFEテストもできます。ダイオードテストでは、ダイオードの順方向電圧降下を測定できます。トランジスタhFEテストでは、トランジスタの直流電流増幅率を測定できます。

DT-830Bは、電子工作や修理などに便利なデジタルマルチメーターといえます。価格は、おおよそ800円から2000円程度の範囲で販売されているようです。電池は付属していません。
AliExpressで極端に安い価格で販売されているケースがありますが要注意です。送料が高いケースがあり、まとめて注文しても送料×数量分の合計金額になってしまうショップが多いので、ご注意ください。

①機能/レンジ切り替えスイッチ
②LCDディスプレイ
③ー入力端子
④+入力端子:直交流電圧・抵抗・直流電流
⑤+入力端子:10A直流電流
⑥トランジスタ計測端子

DT-830Bには、同じモデル名(DT-830B)で仕様の異なるテスターが存在するようです。過去のモデルにはバッテリー残量表示や導通チェック機能があるモデルや、最新のモデルにはないヒューズが内蔵されているものが販売されていました。説明書には温度が計測できると記載がありますが、そのための端子がなく、現在のDT-830Bの仕様では計測できないようです。モデル名を変更せずに少しずつ、マイナーチェンジをしているのかもしれません。

Kuman WH5000A

WH5000Aは、KumanやETEPON、AstroAIなどのブランドで販売されている、多機能で高性能なデジタルマルチメーターです。
WH5000Aの特徴は以下のとおりです。

  • 6000カウントの高分解能で、小数点以下4桁まで表示できる
  • データホールド、最大値ホールド、ハンギングマグネット、自動電源オフ、立てかけて設置できる背面スタンドなどの便利な機能を備える
  • F400mA/600VおよびF10A/600Vのセラミックダブルヒューズを内蔵し安全性が高い
  • 表示が大きく、バックライト付きLEDなので暗い場所でも見やすい

PCを修理するのが得意なユーチューバーが使っていたので、あまり深く考えずに購入しました。3千円ちょっとでした。

FNIRST DSO-TC3

FNIRST DSO-TC3は、デジタルオシロスコープ、トランジスタテスター、信号発生器の3つの機能を1台に統合した小型の計測器です。

以下のように、圧倒的に多機能です。

  • 2.4インチのカラーTFTディスプレイを搭載し、充電式リチウム電池で動作します。
  • オシロスコープは10MaS/sの実時間サンプリング率と500kHzの帯域幅を持ち、最大400Vの電圧信号を測定できます。
  • トランジスタテスターはNPNとPNPの3極管、NチャンネルとPチャンネルのMOSFET、JFET、ダイオード、2重ダイオード、サイリスタなどの各種トランジスタや抵抗器、インダクタ、コンデンサなどの受動部品を自動的に識別して測定します。
  • 信号発生器は正弦波、方形波、パルス波、三角波、のこぎり波、直流波の6種類の信号波形を出力できます。出力周波数は1-100kHzで調整可能です。なお、この製品ではのこぎり波を「ランプ波」と表示しているようですが、一般的にはのこぎり波と三角波の総称がランプ波だと思います。
  • その他にも導通試験、電圧試験、温度・湿度測定、赤外線デコードなどのツールボックス機能があります。

特徴は次の通りです。

  • ABS製の耐衝撃ハウジングで丈夫で軽量です。アンチスリップ凹型デザインで持ちやすく操作しやすいです。
  • 高弾性キーで快適な操作感が得られます。シンプルなインターフェイスで初心者でも使いやすいです。
  • TFTカラースクリーンで高解像度ディスプレイです。LEDバックライト付きで明るい光の中でもデータをはっきりと見ることができます。
  • 背面にスタンドがあるので、立てかけた状態でも使用できます。

価格はオシロスコープ用プローブ付きで、AliExpressで5,811円(税込)でした。高くなりますが、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピング、楽天市場でも買えるようです。

DSO-TC3の利点と欠点は以下の通りです。
利点:

  • 3つの機能が1台に入っているのでコストパフォーマンスがとてつもなく高いです。
  • 充電式リチウム電池で長時間使用できます。
  • オートボタン一発で面倒な調整なしで測定波形を表示できます。
  • トランジスタテスターは多種多様な部品を自動的に識別して測定できます。

欠点:

  • 取扱説明書が英語と中国語、その他2か国語が外国語のみで、日本語の説明がありません。
  • オシロスコープの帯域幅は500kHzと低いので、高周波の信号を測定するには向いていません。
  • オシロスコープの測定レンジはオートレンジのみで、手動で設定することはできません。
  • トランジスタテスターの測定精度は高くなく、部品によっては誤判定することがあるようです。
  • 信号発生器の出力電圧は3.3Vまでしか出力できません。

さいごに

安価なテスターを紹介しました。安価でも、家庭や学校、実験や電気工作では十分な機能を有しているといえます。ぜひ、どれかを手に取って遊んでみてください。でも、感電や事故には十分お気をつけてくださいね。