Raspberry Pi(ラズパイ)を活用するにはOSをインストールする必要があります。ラズパイでは「Raspberry Pi OS」をはじめ、様々なOSを選択することができます。OSは、デスクトップPCでのMicrosoftのWindowsやAppleのMacOSなどに相当します。
Raspberry Pi でOSを選ぶには
Raspberry Pi では使い方に応じてさまざまな種類のOSがリリースされています。
OSの種類 | 対象者 | 概要 | ひとこと |
Raspberry Pi OS | 入門者 | プログラミングや小規模開発に利用でき、 Windowsと同様の操作感を持つ。 | 迷ったらこれ |
Ubuntu MATE | Ubuntuに慣れている人 | Linuxで特に人気がある。初代のPiでは動作しない。 | |
Windows 10 IoT core | Windowsアプリの開発経験者 | Windows 10のVisual Studio環境を用いたクロス環境でIoT開発を行う。 | |
OSMC | 映像を扱いたい人 | ホームシアター用OS。 | |
Retropie | ゲームが好きな人 | レトロゲーム用OS。 |
本稿ではRaspberry Pi OSのインストール方法を紹介します。
Raspberry Pi OSはRaspberry Pi財団が推奨してリリースしているOSなので、情報量も豊富です。
大まかな流れ
Raspberry Pi OSをインストールする大まかな流れは以下の通りです。
- microSDカードを用意する
- microSDカードにOSのイメージを書き込む
- OSの設定を行う
microSDカードを用意しよう
PCではHDDやSSDにOSやデータを格納しますが、ラズパイではmicroSDカードからOSを立ち上げて動作させます。
プリインストールされたmicroSDを買うには
OS(Raspberry Pi OS)がインストールされたmicroSDカードが購入できます。購入する場合、以下の点にご注意ください。
- 日本語環境がセットアップされているか
- OSは64bit版か32bit版か
32bitだとメモリが4GBしか認識されず、ラズパイ 4Bの8GBを持っている場合、メモリが無駄になってしまいます。一方で、32bitでしか利用できない機能(動く物体を検知するmotionなど)があるようなので、このような点を確認しておく必要があります。 - ラズパイの機種に対応しているか
初代のラズパイのCPUでは、32bit版でのみ動作可能のようです。
microSDカードを選ぶには
microSDカードは最低でも8GB(公式推奨値)のものを用意します。公式では8GB推奨とありますが、16GB以上を選択したほうが無難かもしれません。画像や音声などのデータを扱うなら、32GB以上がお勧めです。32GB以下と64GBでそれほど価格差が無い場合は、64GBにお得感があります。
アクセス・スピードの観点でClass 10が望ましいでしょう。microSDカードはPCのHDD/SSDにあたるので、高速であるに越したことはないのですが、ひとまず最初は安価で動作実績のあるものを選択しておくのも一手です。慣れてRaspberry Pi OSのGUIを多用するようになったら高速なmicroSDカードも購入してみるという考え方もあると思います。
また、microSDカードはラズパイとの相性(あたり/はずれ)があるといわれています。
あくまでも参考ですが、私は次のmicroSDカードを使用しています。
トランセンド microSDカード 64GB TS64GUSD300S-AE(左)
Team microSDXCカード 64GB TGTF064GWA100(右)
OSのイメージを書き込むには
PCの場合、OSのインストールメディア(DVDやUSBスティック)からSSD/HDDにインストールします。ラズパイではDVD等がないので、いったんインストールが完了したイメージファイルが提供されていて、イメージをmicroSDカードに複製する方法をとります。
本稿では、Raspberry Pi OSの64bit版をmicroSDカードに書き込みます。Raspberry Pi公式の「Raspberry Pi Imager」(Imager)を使用する方法が最も簡単でしょう。ImagerはWindows、macOS、Ubuntu(等のLinux)で利用できます。
ここではWindowsからImagerを使用してmicroSDに書き込む方法を紹介します。
Raspberry Pi Imagerのインストール
まず、「Raspberry Pi Imager」(Imager)のインストーラをこちらのURLからダウンロードします。
ダウンロードされたインストーラは「ダウンロード」等に実行ファイルとして保存されます。”imager_1.7.3.exe”といった、
“imager_<バージョン名>.exe”というファイル名でしょう。このファイルをダブルクリックして起動します。
Imagerのインストーラが起動されると、下の画面が表示されるので、[Install]をクリックします。
途中、インストールの進捗状況が表示されます。
下の画面でインストール完了です。[Finish]をクリックします。
①Windowsロゴ(田)キーを押して、②検索窓から”ras”と入力すると、③「Raspberry Pi Imager」が表示されるでしょう。「Raspberry Pi Imager」をクリックして起動します。
以下の画面が表示されたら、[OSを選ぶ]をクリックします。
[Raspberry Pi OS(32-bit)]が「お勧め」(Recommended)と表示されますが、ここでは64bit版を選択したいので、[Raspberry Pi OS(other)]を選択します。 [Raspberry Pi OS(64-bit)]を選択します。ここで、PCのカードリーダにmicroSDカード挿入します。
下の例では、microSDカードがDドライブにマウントされているので、それを書き込みの対象ストレージとして選択します。
下の歯車アイコンのボタンで、ホスト名やユーザ名、Wi-Fiなどの設定をあらかじめ行っておくことができます。設定を保存できるので便利な機能ですが、こちらで設定すると日本語の表示や入力に支障が出て戸惑うケースがある(22年11月3日時点)ので、本稿では歯車アイコンからの設定は行いません。
いよいよ、microSDカードにOSのイメージを書き込みます。
[書き込む]をクリックします。
microSDカードの中身はすべて消えてしまいます。かわりに、Raspberry Pi OSのイメージが作成されます。
[はい]をクリック。
microSDカードへの書き込みの進捗が表示されます。
「書き込みが正常に終了しました」と表示されたら成功です。
microSDカードを抜きとります。
[続ける]をクリック。
これでRaspberry Pi OSの入ったmicroSDカードの作成が完了です。
Imagerの右上の[×]をクリックして、Imagerを終了します。
ラズパイ起動前に準備することとは
- OSを書き込んだmicroSDカードをラズパイに挿入します。
- HDMIポートにディスプレイを接続します。
- USBポートにキーボードとマウスを取り付けます。
- 必要に応じて、LANケーブルでブロードバンドルータとラズパイを接続します。
- 最後に電源ケーブルを電源端子に接続します。
電源を接続すると、おもむろにOSの起動が始まります。
はじめてラズパイを起動したときには
microSDカードへの書き込みをした直後、はじめてラズパイを起動し、下の画面が表示されます。
[Next]をクリックします。
Coutryを[Japan]、Languageを[Japanese]、Timezoneを[Tokyo]に設定し、[Next]をクリックします。
ユーザ名とパスワード(2回)を入力します。
[Next]をクリックします。
画面の隅が黒い淵のように表示されることがあるようです。その場合はスライドボタンによって調整してみてください。
[Next]をクリックします。
Wi-Fiの設定を行います。SSIDの一覧から選択して[Next]をクリック。
パスワードを入力して[Next]をクリック。
Wi-Fiに接続中画面が表示され、接続が完了すると次の画面に遷移します。
次の画面ではソフトウェアのアップデートを行います。
ここでは[Skip]せずに[Next]をクリックするのがおすすめです。
ソフトウェアを最新にアップデートするだけではなく、入力メソッドなど日本語関連のパッケージがインストールされるからです。[Skip]してしまうと、のちほど、日本語が扱えるようにする手順を行う必要があります。
ただしアップデートするには、この時点でWi-FiかLANケーブルの接続が完了している必要があります。
アップデートが正常終了すると、以下の画面が表示されるので、[OK]をクリックします。
次の画面が表示されたら、Raspberry Piの初期設定完了です。
Raspberry Pi OSのパッケージを最新にするには
パッケージとは、Linuxで採用されている、最新のアプリを配布・更新・削除するための仕組みです。ラズパイではシステムを最新にアップデートする操作をコマンドラインで行います。
タスクバーの端末アイコンからLXTerminalを起動します。
ショートカット[Ctrl]+[Alt]+[T](3つ同時に押す)でもLXTerminalが起動できます。
次のコマンドを入力します。
sudo apt update
下図のように、アップグレードできるパッケージがある場合は、パッケージを最新に更新できます。
次のコマンドでパッケージは更新されます。
sudo apt -y upgrade
プロンプトが表示されたら、アップグレードは完了です。
ラズパイを終了するには
シャットダウンは[ラズベリーアイコン]をクリックして表示されるメニューの[ログアウト]をクリックします。
表示された「Shutdown options」ダイアローグから[Shutdown]をクリックします。
ラズパイでは自動的に電源OFFにはなりません。ディスプレイの表示が消えてしばらくしてから、コンセントを抜くなどして電源を切ります。
ラズパイで日本語環境が使えない場合の対処方法とは
Raspberry Pi OSで、日本語で表示されない、あるいは日本語文字入力ができない場合の、日本語が扱えるようにする手順を紹介します。
日本語入力などができない原因はさまざまですが、次のような場合も日本語環境に支障が出ます。
- Raspberry Pi OSを初めて起動した際に実施する初期設定の「Update Software」で[Skip]を選択した。
- ImagerでRaspberry Pi OSのイメージをmicroSDカードに書き込む際、歯車アイコンからカスタマイズ・オプション画面に進んで設定をした。
このような場合に、日本語関連のパッケージを導入する手順を2種類紹介します。
初期設定コマンド「piwiz」
端末(LXTerminal)から以下のコマンドを実行します。
sudo piwiz
piwizが実行されると、下の画面が表示されます。
以降、設定の手順は「はじめてラズパイを起動したときには」で述べた手順と全く同じです。ユーザ名なども同じでOKです。
必ず「Update Software」で[Next]を選択してアップデートしてください。
ただし、今回の検証の中で次の2点の問題がありました。本稿の検証環境でのみ発生する現象かもしれません。
piwizの異常終了
上述の “sudo piwiz” を実行してしばらくそのままにすると、piwizが異常終了してしまう現象が発生しました。すばやく[Next]ボタンを押して次の画面に遷移すると正しく設定できました。
オートログインの無効化
再起動後、オートログインがOFFに変更され、ログイン画面が表示されるようになりました。
元のオートログインモードに戻したい場合は、ログインした状態で設定を変更します。
[ラズパイアイコン」>[設定]>[Raspberry Pi の設定]をクリック。
piwizを使用しない日本語環境設定の方法とは
左上の隅にある[ラズベリーアイコン]をクリックし、[Preferences]>[Raspberry Pi Configuration]の順に選択します。
「Raspberry Pi Configuration」(ラズパイの設定)画面から、①[Localisation]>②[Set Locale]を選択します。
すると、「Language」が[en(English)]に、「Country」が[GB(United Kingdom)]になっています(③)。
設定画面を終了すると、「変更を反映するためにラズパイを再起動しますか?」と尋ねるダイアログボックスが表示されます。
今すぐ再起動して問題なければ[Yes]をクリックします。
日本語入力の設定方法とは
ここまでで、日本語が表示されるようになりましたが、日本語入力ができるようにはなっていません。
そこで、iBUSとMozcのインストールを端末から行います。
画面上部右の端末(LXTerminal)アイコンをクリックします。
コマンドラインから、以下の通り入力して実行します。最後は[Enter]キーを押します。
sudo apt -y install ibus-mozc
コマンド実行が終了すると、プロンプトが表示されます。
再度、再起動を行います。
タスクバーの右上にiBUSのアイコンが表示されるようになりました。
[日本語-Mozc]を選択すると、Windowsと同様の操作で日本語が入力できます。
さいごに
ラズパイのインストールの手順の紹介でした。
ラズパイならではの注意すべき点を説明できたと思います。
それでは電子工作の世界を、お楽しみください!