はじめに
仮想環境のMacが欲しいと思うときってどんな時でしょうか。
- 実験的なことをやってみたいが、失敗するとMac環境を壊してしまう
- 多様なソフトを影響を考えずにインストールしてみたい
- もし失敗したときに、かんたんに失敗前の状態に戻したい
- macOSを使っているところをみんなに見せたい
動機はさまざまですが、そのような場合、Windows上にVMwareでMac環境を構築してしまうのも選択肢の一つといえます。
仮想環境なのでホストマシンのスペックが高くても、実マシンと同じというわけにはいきません。GPUを使用するAIの実行や動画編集には向かないでしょう。しかし、活用できるシーンは多くあると思います。
仮想イメージファイルをバックアップしておけば、時間を巻き戻せるのも魅力です。
ぜひ、本稿を参考にしてMacにチャレンジしてみてください。
【あくまで参考】PCに必要なスペックとは
- CPU①:インテルかAMD(本稿ではインテルで検証)
- CPU②:論理プロセッサ数4以上(仮想マシンに2プロセッサ必要)
- メモリ:8GB以上(仮想マシンに4GB必要)
- ストレージ:空き容量が60GB以上、推奨サイズは80GB以上
仮想化の準備をしよう
MontereyのISOイメージを手に入れよう
仮想マシンを構築するためのインストール元となるISOイメージをこちらのリンクなどからダウンロードします。ファイルサイズが約15GBあり、ダウンロードに相当な時間がかかります。
ダウンロードしたファイルはISO形式のファイルです。
Macをお持ちの方は…
Macをお持ちの方は、Macで Monterey をダウンロードしたほうが最新のイメージが入手できますし、早いかもしれません。その場合、ISOイメージに変換する必要がありますが、それらの手順は省略します。
PCのBIOSから仮想化の設定をしよう
お使いのPCのBIOS等から「仮想化」を有効化してください。 具体的な設定方法はPCによって異なるため、メーカの説明書やWebの情報を参照ください。
VMwareをすでにお使いの方への注意事項
VMWareをすでにお使いの方は、必ずバックアップを取ってから試すことをお勧めします。
VMwareをインストールしよう
VMware(R) Workstation 16 Playerのバージョン16をインストールします。本稿の執筆時点でのバージョンは16.2.1です。
ここでは、VMware(R) Workstation 16 Playerのインストール手順の説明を省略し、インストール後を前提として説明します。
ただし、まだ起動はしないでください。
パッチツールを実行しよう
パッチツール(Unlocker)とは、VMware PlayerがMac OSの仮想マシンを実行できるようにするツールです。
こちらのURLからダウンロードします。
①[Code]をクリックして表示されるメニューから、②[Download ZIP]をクリックします。
ダウンロードしたファイルを解凍します。解凍されたファイルのうち、「win-install.cmd」ファイルと「win-update-tools.cmd」ファイルを管理者として実行します。
「win-install.cmd」 を右クリックして、[管理者として実行]を選択します。
同様に、 「win-update-tools.cmd」ファイルも [管理者として実行]を選択して実行します
以下のような画面が表示されたら[詳細情報]をクリックします。
[実行]をクリックします。
新しい仮想マシンの器を作ろう
VMware Workstation 16 Playerを起動し、以下の流れを実行します。
[新規仮想マシンの作成]をクリックします。①[インストーラディスクイメージファイル]を選択し、②[参照]ボタンをクリックします。続いて表示される画面で、あらかじめ用意しておいたmacOS Monterey のISOイメージファイルを指定します。
「このディスクイメージのOSの種類を検出できませんでした。」と表示されますが、ここでは気にせず、先に進みます。
①[Apple Mac OS Ⅹ]を選択し、②「macOS 12」をクリックします。
「macOS 12」が選択されたところで、[次へ]をクリックします。
「仮想マシン名」は任意の名前が付けられます。
ここでは「 Monterey 」としました。
次に、[仮想ディスクを単一ファイルとして格納]をクリックします。
ここで[ハードウェアをカスタマイズ]をクリックし、「ハードウェア」画面を表示します。
左側の「メモリ」をクリックし、ホストマシンのリソースに応じたメモリサイズを指定します。4GB以上を指定する必要があります。私は約6GBとしました。
CPUは可能であれば、ホストマシンの論理CPU数の2分の1程度を割り当てるとよいでしょう。
設定が完了したら、[OK]をクリックします。
最後に[閉じる]をクリックします。
「新しい仮想マシンウィザード」画面に移って[完了]をクリックして画面を閉じます。
VMwareに仮想マシン「 Monterey 」のスタートボタンが表示されますが、まだ起動しないでください。
ここで一旦、終了します。まだMacOSを起動しないでください。
VMXファイルを編集しよう
テキストエディタ(notepadなど)で
「Documents\Virtual Machines\Monterey」にある、
VMXファイル、「Monterey.vmx」を編集します。
なお、上記「 Monterey 」の部分は、あなたが命名した「仮想マシン名」です。「 Monterey 」以外の名称にした場合は、仮想マシン名に置き換えてください。
開いた「 Monterey.vmx」の最終行に、以下の行(コード)を追加します。
keyboard.vusb.enable = "TRUE" keyboard.vusb.idVendor = "0x0000" keyboard.vusb.idProduct = "0x0000" smbios.reflectHost = "TRUE" hw.model = "MacBookPro14,3" board-id = "Mac-551B86E5744E2388" smc.version = "0"
ここで、上記コードの最初の3行で、キーボードの設定を有効化し、JISキーボードを使えるようにしています。USキーボードを使用する場合は不要と思われます。
AMD系のCPUの場合の覚書
インテル系のCPUはここまでの作業で完了です。もし、AMD系のCPUの場合、次の項目の作業を行うことによってMontereyを動作させることができる可能性があります。ただし、Big Surでは検証済みですが、今回のMontereyでは未検証です。ご注意ください。
AMD系のCPUでは、上記のコードに加えてVMXファイルに以下のコードを追加します。
cpuid.0.eax = "0000:0000:0000:0000:0000:0000:0000:1011" cpuid.0.ebx = "0111:0101:0110:1110:0110:0101:0100:0111" cpuid.0.ecx = "0110:1100:0110:0101:0111:0100:0110:1110" cpuid.0.edx = "0100:1001:0110:0101:0110:1110:0110:1001" cpuid.1.eax = "0000:0000:0000:0001:0000:0110:0111:0001" cpuid.1.ebx = "0000:0010:0000:0001:0000:1000:0000:0000" cpuid.1.ecx = "1000:0010:1001:1000:0010:0010:0000:0011" cpuid.1.edx = "0000:0111:1000:1011:1111:1011:1111:1111"
その他覚書
ビデオメモリの容量変更。
以下の数値を調整する。
svga.vramSize = 134217728
Monterey をインストールしよう
MacOSのインストールと設定
ここで再度、VMware Workstation 16 Playerを起動し、 Monterey のインストールと設定を行います。
ドキドキする瞬間です。アップルマークが表示されました。
「日本語」を選択します。
この作業はわかりにくいところかもしれません。
おおまかに次の作業を行います。
- ディスクユーティリティで空のインストールメディアを作成、
- OSをインストール
まず、[ディスクユーティリティ」を選択して[続ける]をクリックします
空のドライブを作成するため、以下の手順を行います。
- [VMware Virtual SATA Hard Drive Media]を選択
- [消去]をクリック
ここがわかりにくいところですが、これからドライブを「消去」し、新しい空のドライブを作成します。新しいドライブ名を指定します。
私は「appledisk」としました。名称は任意で決められます。デフォルトの「名称未設定」のままでもかまいません。
名前を入力したら、[消去]をクリックします。
新しいドライブの作成が完了したので、[完了]をクリック。
赤い[×]をクリックしてディスクユーティリティを終了します。
[macOS Monterey インストール]を選択し、[続ける]をクリック。 [続ける]をクリックします。①[同意する]をクリックし、さらにポップアップ画面の②[同意する]をクリック。
先ほど作成した空のディスクドライブが表示されるでしょう。①ドライブを選択し、②[続ける]をクリックします。
インストールが開始されます。
あと少し…と思っても、ここからかなり時間がかかります。
「日本」を選択して[続ける]をクリックします。
ここからはお好みに応じた設定やカスタマイズが選べます。ご参考までに私の選択結果をお伝えします。
[続ける]をクリック。 [今はしない]をクリック。 [続ける]をクリック。 [今はしない]をクリック。私は[あとで設定]をクリックしました。
[スキップ]をクリック。 [同意する]をクリック。さらに[同意する]。
フルネーム、アカウント名、パスワードを入力して[続ける]。
私は、位置情報サービスを有効にしないで[続ける]をクリックしました。
今いるところを選択して、[続ける]をクリック。
[続ける]をクリック。 [あとで設定]をクリック。外観モードを選択して[続ける]。
[続ける]。
いよいよ最後の設定です。
JISキーボードを使用している場合を想定し、VMXファイルにJISキーボードを認識させるコードを追加しました。ここでキーボードの設定を行います。
画面に従って操作ください。
ようやく設定が完了し、めでたくmacOS 11 Monterey が使えるようになりました。
ここまででも Monterey は使用できますが、フルスクリーンモードで使えたほうが便利です。次にその方法を紹介します。
フルスクリーンで使えるようにしよう
VMware Toolsのインストール方法とは
VMware Tools は、仮想マシンのゲスト オペレーティング システム(ここではmacOS)に様々な便利な機能を提供し、またパフォーマンスを強化するとされている、ユーティリティ一(ツール)の集まりです。たとえば、仮想マシンをフルスクリーン表示したい場合などに必須のツールとなります。
以下ではVMware Toolsのインストール手順を、図を中心に説明します。
VMware Toolsのインストールには仮想マシンのCD/DVDをマウントするため、現在マウントされているメディアを取り出します。
最上部のメニューバーから[Player]>[管理]>[VMware Toolsのインストール]をクリック。
画面の[VMware Toolsのインストール]をダブルクリックし、インストールを開始します
[続ける]をクリック。 [インストール]をクリック。セキュリティの画面が表示されます。パスワードを入力して[ソフトウェアをインストール]をクリック。
同じ「機能拡張がブロックされました」画面が表示されるでしょう。VMware Toolsの機能拡張を有効にするため、[”セキュリティ”環境設定を開く]をクリックします。
[OK]をクリック。
画面左下のカギマークをクリックします。
パスワードを入力し、[ロックを解除]をクリックします。
下の画面の[許可]をクリックし、VMware Toolsの実行を可能にします。
途中で以下の画面が出たら、[あとで行う]をクリックします。
「セキュリティとプライバシー」の画面を終了します。
下の画面が表示されたら、VMware Toolsのインストールは完了です。[再起動]をクリックします。
しばらく待ちます。
立ち上がったら、フルスクリーンモードにしてみます。下図の「フルスクリーンモードを開始」ボタンをクリックします。
フルスクリーンモードはもちろん、画面サイズを自由にリサイズして使用できるようになりました。
それでは、ログインしてみましょう。
これで作業はすべて完了しました。
お疲れさまでした。
おわりに
仮想環境のMacは、実マシンではあまりやりたくない、経験にない実験や検証などの作業に大活躍しています。
みなさまもぜひ、良きMacライフをお楽しみください!