わかりやすいと評判のDiskStationの設定のつまづきポイントとは

Synology DiskStation Plusシリーズは、家庭や小規模オフィス向けの高性能なNAS(Network Attached Storage)デバイスです。本稿ではDS224+のインストールと初期設定について紹介します。付属の説明書や公式Webの情報がわかりやすいと評判のDiskStationですが、迷うところやつまづきそうなところ、説明不足かな、と感じた部分などを丁寧に解説します。

説明書の読む順番とは

日本語ガイド付きの「DS224+/G」を購入すると、ガイドが3冊付属していました。以下の順番で読むとスムーズに設定が進むと思います。
ガイド以外に、「安全のために」という1ページだけのものも付属していますが、本稿での説明対象外とします。

  1. NAS初心者ガイド
    • まず最初に読むべきガイドです。互換性のあるドライブ(HDD/SSD)の選び方や、基本的なセットアップ手順が記載されています。本ガイドの「1.2 ハードウェアの組み立て方法」では、2の「Quick Installation Guide」を参照したほうがわかりやすいです。
  2. Quick Installation Guide
    • ハードウェアの組み立て方法がわかりやすく記載されています。
  3. DiskStation 目的別ガイドブック
    • 様々な機能やアプリについてのガイドです。

メモリを拡張するには

DS224+は標準で2GBのメモリが搭載されています。ファイルサーバとしての基本機能のみを使用するにはこのままで全く問題ないと思われます。以下は2GBのメモリの使用状況です。20%程度しか使用していません。

ここで、DS224+はメモリが仕様上では6GBまで拡張可能です。さらに10GBや18GBに拡張できたという事例もあるようです。DS224+の多彩な機能やアプリをたっぷり使用するという方であれば、メモリの増設を検討ください。
メモリを増設する方法は、こちらのリンクを参照ください。
増設はSynology純正の4GBメモリが手堅いのですが、非常に高価です。筆者は以下のメモリを購入しました。

Panram(CFDが販売)ノートPC用 4GBメモリ PC4-19200(DDR4-2400) SO-DIMM D4N2400PS-4G

筆者の場合は上記メモリを装着して無事、NASで認識させることができました。当然メーカのサポートの対象外となります。
下図はメモリ増設後の使用状況です。

メモリを拡張するタイミングは二つ考えられると思います。

  1. 安心と保険のために最初からメモリを増設しておく
  2. 運用してみて「遅い」と感じたら拡張する

筆者のおすすめは1です。筆者は長年、LinuxのOpenMediaVaultというファイル共有サーバ専用のOSを6GBメモリで運用してきました。DSMと類似するOSといえます。その環境では、メモリ使用量が1GBを超えることがなかったので、ファイル共有をしたいだけであれば、増設の必要性は微妙といえます。しかし、純正メモリは別にしてメモリの価格は安価になっています。DiskStation環境では様々な便利機能が多く整備されています。セキュリティに始まって、外出先での映像の鑑賞など、魅力的な機能がたくさんあって試してみたくなることは容易に想像できます。そのような理由で、予算に余裕があれば、あらかじめメモリを拡張しておくことをお勧めします。
注意しないといけないのは以下の点です。

  1. メモリカードは1枚しか増設できない
    最初に4GB拡張した場合、さらに拡張するには8GB以上と交換するしかなく、最初の4GBメモリを有効活用できない。
  2. 初期搭載の2GBは通常手順では換装できない

インストールと設定をするには

ここで、ハードウェアの構成が終わって電源を投入した状態まで完了しているとします。
下の写真のように、NASの電源横の青いLEDのみ点灯している状態です。写真だと白っぽく映っていますが「青」です。

OSであるDSMをインストールします。PCからブラウザ経由で「
Web Assistant」を使用し、簡単にセットアップできるようになっています。

https://finds.synology.com/にアクセスすると、上の通りWeb AssistantがNASを自動的に検出します。DSMがまだインストールされていないNASだけを表示しています。NASを選択して[接続]を押します。

ライセンスに同意します。

自動的にインストールするには上の通り選択します。

続行すると、NASのデータがすべて消えます。

ここで再起動されます。

再起動後、NASの「STATUS」ランプが緑に点灯します。

上の画面が順番に表示されるので、しばらく待ちます。

上の「ようこそ」画面が表示されたら[起動]を押します。

DSMの管理者アカウントを作成します。今後、NASの管理を行う際に必ず必要となる重要なログインID(アカウント)となります。

アップデートのオプションを選択します。筆者は「重要なDSMとパッケージの更新のみ」を選択しました。NASの安定性を重視したことが理由です。選択肢「自動的に最新の…」だとすべてのアップデートがインストールされることになり、システムが不安定になることを嫌いました。考えすぎかもしれません。

分析データの送信を許すかどうかの設定をお好みで行います。

こちらも、お好みで選択します。

外部からNASにアクセスする場合は有効にするのが安全でしょう。
ローカルLANで閉じる運用ならば、煩雑になる2要素認証を避ける選択しも考えられます。

企業等で求められるセキュリティレベルでご判断ください。

共有フォルダを作成するには

ストレージプールとボリュームを作成しよう

上の画面からストレージプールとボリュームを作成します。
ストレージプールとは、HDD/SSDのまとめ方(=RAIDの種類)を決定し、RAID(Redundant Array of Independent Disks)を組んだものです。RAID技術を使用して、データの冗長性を確保し、ディスク障害時のデータ損失を防ぐことができます。
ボリュームは、ストレージプール内に作成される論理的なストレージ単位です。ボリュームは、実際にデータを保存する場所であり、ファイルシステムが適用されます。ボリュームは、ストレージプールの容量を利用して作成され、容量の範囲内で必要に応じて拡張することができます。
万一、ストレージプールやボリュームの意味が分からなくても、次の手順に従えばNASを構築できます。

[起動]を押します。

本稿では、HDD 6TB×2をミラーリングする想定での手順を紹介します。
「SHR」を選択することにより、ミラーリングが構成されます。ミラーリングでは2台のドライブのうち、片方のドライブが故障してもデータが消えてなくならなりません。その代わり、データ容量としては全体の1/2の6TBが上限となります。

SHRとは

SHR(Synology Hybrid RAID)は、Synologyが独自に開発したRAID技術で、従来のRAIDと比べていくつかの利点があります。以下にSHRの特徴とメリットを詳しく説明します。

  1. 異なる容量のHDDを効率的に利用
    • SHRは異なる容量のHDDを組み合わせて使用でき、最大限のストレージ容量を確保します。例えば、6TB、8TB、10TBのHDDを混在させた場合でも、効率的に容量を利用できます。
  2. 自動設定と管理の簡便さ
    • SHRは自動的に最適なRAID構成を選択し、ユーザーが複雑な設定を行う必要がありません。これにより、初心者でも簡単にRAIDを構成できます。
  3. 柔軟なストレージ拡張
    • SHRは、HDDを追加する際に既存のデータを保持しながらストレージ容量を拡張できます。これにより、将来的な容量の増加にも柔軟に対応できます。
  4. 互換性制約
    • SHRはSynologyのNASに特化しているため、他のメーカーのNASでは使用できません。

ストレージプールとボリュームを作成しよう(続き)

RAIDタイプSHRをを組むディスクの組み合わせを選択する画面です。2台チェックして[次へ]。

筆者はドライブチェックを行いました。HDDは新品でも不良セクタが検出される可能性があるため、チェックを行ったほうが良いと言えます。ただし、チェックに一定時間を要します。

ストレージプールにボリュームを割り当てます。筆者は全領域を割り当てました。

ファイルシステムは推奨されているBtfsとしました。

任意で暗号化を指定します。物理ディスクの盗難に備えた暗号化を検討します。

これまでの設定内容を確認し、問題なければ[適用]を押します。

消去されて問題なければ[OK]。

ボリュームの作成が無事完了しました。

さあ!共有フォルダを作成しよう

ここでは、共有フォルダ名称の決定や、誰を共有フォルダにアクセスできるできるようにするかの権限を設定します。

File Stationを起動します。

MASに共有フォルダがない状態だと上の画面が表示されます。[OK]を押します。

共有ファイル名を指定します。
必要に応じて、共有ファイルを作成するボリュームを指定し、その他の項目のチェックを確認します。

任意でセキュリティ対策を有効化します。

任意で設定を有効化します。ただしチェックサムを有効化すると性能が低下する可能性があります。
「共有フォルダの割当量を有効化」にチェックすると、フォルダの総容量に制限を設けられます。

設定内容を確認して[次へ]を押します。

共有フォルダへのアクセス権限をユーザごとに設定します。
[適用]を押すと共有フォルダの作成が始まります。

上の画面に移ったら、共有フォルダの作成は成功です。

共有フォルダにアクセスするには

WindowsのPCからアクセスする方法は、以下のとおりです。

エクスプローラのアドレスバーから以下のように入力します。

上図の[デバイス名」(ホスト名もしくはコンピュータ名のことです)と「フォルダ名」は実際の名称に置き替えてください。
NASのデバイス名が「ds1」、共有フォルダ名が「WorX」の場合は以下の通りです。

\\ds1\WorX

リンクアグリゲーションの設定方法とは

リンクアグリゲーションとは

リンクアグリゲーション(LAG)の負荷分散機能を使うことで、NASのネットワーク性能を向上させることができます。
まず、一般的なLAGのメリットは、複数のLANポートを使用することで、帯域幅が増加し、通信速度が向上することです。ただし、LAGのプロトコル(約束事)に対応したルータやスイッチが必要です。
しかしながら、LAGに対応したルータやスイッチがなくても、LAGの機能の一つである負荷分散機能は利用可能です。具体的には、LANケーブルを2本NASに接続し、設定を行うことで、
トラフィックが複数のリンクに分散されるようになります。特定のリンクに負荷が集中するのを防ぐことが期待できます。おそらくですが、冗長性も確保されると思われます。もし1つのリンクがダウンした場合、LAGは自動的に他のリンクにトラフィックをリダイレクトする、自動フェイルオーバーが期待できます。
デメリットは物理ポートが消費されることでしょうか?
以下に設定手順を詳しく説明します。

リンクアグリゲーションの設定手順とは

LANケーブルを接続しよう

NASのLANポートに2本のLANケーブルを接続し、それぞれをスイッチ(ハブ)に接続します。

負荷分散モードに設定しよう

DSMにログインします。

コントロールパネル>ネットワークと移動します。

[ネットワークインターフェイス]>[作成]をクリックします。
メニューの[Bondの作成]を選択します。

[負荷分散機能]を選択し、「次へ」をクリックします。

「LAN1」と「LAN2」をチェックし、「次へ」をクリックします。

筆者は上図の状態で[完了]をクリックしました。


[はい]を押します。
これでリンクアグリゲーションの設定が完了です。

おわりに

DiskStation DS224+を例として、ハードウェアの構成からOSのインストール、共有ファイルの作成までを紹介しました。
NASは非常に多機能になる一方、本稿で紹介したような設定のわかりやすい製品も出てきており、驚かれた方もいるのではないでしょうか?
興味を持った方はぜひ、トライしてみてください。