中古ショップで購入したTeraStation TS5600DNを復活させます。HDDなし本体のみで11,000円で販売されていました。寄せ集めのHDDを利用して一時データ保管を目的とした共有サーバを構築します。
TeraStation TS5600DNとは
TeraStationは、Buffalo Technologyが提供するネットワークストレージデバイスのシリーズです。これらのデバイスは、企業や個人のデータを安全に保存、管理、共有するために設計されています。
TS5600シリーズは、TeraStationラインナップの一部で、特に企業向けの高性能ネットワークストレージデバイスです。
TS5600DNは2015年02月に発売されました。仕様は以下の通りです。
- Intel Atomプロセッサと2GBのDDR3 RAM
- 6つのHDDベイにより、大容量ストレージの構成が可能で、最大16TBまで対応。RAID 0, 1, 5, 6, 10の構成をサポート
- RAID 6構成により、2つのディスクが故障してもデータを保護可能。また、ホットスワップ対応で、システム稼働中にディスクを交換可能
中古購入時の注意点とは
ネットワークストレージデバイスやNASの実態は小型コンピュータなので、ファームウェアやOSが現在も提供され、保守が継続されているかがチェックポイントとなります。TeraStationのファームウェアは23年10月に更新されており、その点は問題なさそうです。
次に、TeraStationは新品での購入時点ではRAIDが構築済みです。ファームウェア(実態はLinux系のOSと思われる)はHDDにインストールされています。したがって、関連するマニュアル類には、HDDなしの状態からNASに仕上げる手順は書かれていません。本稿ではその手順を中心に紹介します。
また、6台のHDDすべてが「管理情報」を保存する領域として40GBから60GB使用されます。
使用するHDDですが、本稿ではBuffalo Technologyの互換リストに無いものを使用しています。たまたま余っている古いHDDを寄せ集めて使用しているからです。筆者の環境では互換リストに無いHDDを使用しても、問題は発生していません。しかし、重要なデータを保管する用途では互換リストにあるものを使用すべかもしれません。
互換リストに無いHDDを使用するにあたっては自己責任でお願いいたします。
中古で購入時のパッケージ内容は
下の表のとおりです。
品目 | あり(〇)/なし(×) |
---|---|
TeraStation本体 | △(HDDなし) |
前面カバー開閉用鍵 | 〇 |
TeraStation本体ACケーブル | △(2極が付属:説明書では3極) |
3極-2極変換アダプター | × |
ケーブル抜け防止バンド | × |
LANケーブル | × |
CD-ROM | × |
導入マニュアル | × |
ハードディスク交換手順 | × |
保証書 | × |
どのようなNASに仕立てるか
HDDのベイが6あるので、6台のHDDを使う方法を考えます。以前から、余っているHDDを活用する方法がないものかと思っていました。
160GBから400GBくらいのHDDが複数あるので、6台をJBODで集約するという方法が考えられます。JBOD(ジェイボド)とは、Just a Bunch Of Disksの略で、複数のハードディスク(HDD)を論理的に連結して、1つのハードディスクとして利用できるようにする技術です。容量の異なるディスクが搭載されていても、全てのディスク容量を使用できるメリットが魅力です。しかし、TS5600DNではJBODはサポートされていないようです*。また、データの冗長機能や修復機能などが備わっていないため、HDDの故障に弱いのがデメリットです。どれか一つHDDが故障すると全データが飛んでしまうリスクを考えると、故障率の観点でJOBDは止めたほうがよさそうです。
そこで、2台ずつストライピングを組むことにしました。JBODよりは故障率が小さく、アクセス速度は2倍弱を望めます。
下の表は6つのベイに割り当てたHDDの容量を示します。
「HDD」カラムは物理的な容量です。
スロット番号 | HDD |
---|---|
1,2 | 400GB×2 |
3,4 | 320GB×2 |
5,6 | 160GB×2 |
合計 | 1,760GB |
NASはローカルのLAN環境のみの使用とし、インターネットからのアクセスは禁止にします。
*海外のページに公開されているデータシートには、下のようなナゾのJBODについての情報があります。
デバイス復活手順の概要
おおまかな手順は次の通りです。
- TS5600DNにHDDをマウントし、電源に接続
- ファームウェアをダウンロードし、USBから立ち上げてインストール
- この時点ではまだデバイスが使用できないため、ファームウェアをアップデート
- 管理画面から各種設定したのち、ストライピングを構築
ハードウェアをセットアップするには
TS5600DNにHDDをマウントし、電源に接続します。
以下の手順を行うには、最低でも1台のHDDをマウントしておく必要があります。
筆者は最初から6台のHDDをマウントしておきました。
こちらのリンクから、下の画面に移動します。
デバイスの各部の名称やセットアップ手順については「導入マニュアル」、HDDのマウントについては「ガードディスク交換手順」が参考になります。
ファームウェアをダウンロードするには
USBフラッシュドライブからブート可能な TS5000 シリーズ用のリカバリ イメージをダウンロードします。最低 4GB の USB フラッシュ ドライブが必要です。USBドライブの中身はすべて削除されるのでご注意ください。
こちらのリンクから下の海外ページに移動します。
上の「Download Contents」タブを選択します。
ダウンロードの対象がカテゴリ別に分かれていて、カテゴリの見出しが、Firmware、Documentation、 Utilities に分類されています。
Utilitiesの中に、「Bootable USB recovery image for TS5000 series. Requires a minimum 4GB USB flash drive.」と書かれたものをダウンロードします。
ダウンロード済みのファイルは、「TS5k_recovery_260.zip」という名称でした。ファイルをエクスプローラから右クリックして解凍します。
解凍したファイルは上図のように展開されます。
「TS5000V2.6bootUSB.ddi」がこれから書き込むイメージファイルです。書き込みは同梱されている「DDWin.exe」で行います。
なお、書き込みは「Rufus」や、Linux環境であれば「dd]コマンドでも可能です。
「DDWin.exe」を右クリックして[管理者として実行]を選択します。[管理者として実行]としないと、書き込み先のディスクが認識されないので、ご注意ください。
- イメージの書き込み先(USBフラッシュドライブ)であることを確認します。
- 書き込み先を変更する場合は[ディスク選択]を押します。
- [ファイル選択]からイメージファイルを指定します。
- ファイル名は本稿執筆時点で上図④でした。
- [<<書込<<]を押します。
USBドライブの中身はすべて削除されます。
以下のメッセージが順番に表示されますが、すべて[はい]としました。
上のメッセージが表示されたら、書き込みが完了です。
ファームウェアをインストールするには
背面にある「USB/HDDブート切替スイッチ」を「USB」側に切り替えます。
次に、USB2.0ポートにUSBドライブを挿入します。「導入マニュアル」には「USB2.0ポート」と明記されているため、USB3.0ポートではUSBドライブから起動できないと思われます。ご注意ください。
電源ボタンを押します。
液晶の表示部に注目します。途中で、「PushFuncToStart」と表示されます。
フロントのファンクションボタンを長押します。
その後、「Change Boot SW」と表示されます。まず電源を切ります。続いて「USB/HDDブート切替スイッチ」を「HDD」側に切り替えます。
ここでLANケーブルを接続しておきます。
その後、再度電源を投入します。
ここまでの作業でファームウェアのインストールが完了し、TS5600DNは起動可能な状態になりました。しかしこの時点ではファームウェアのバージョンが古く、ブラウザからの管理画面が使用できません。
最後に、ファームウェアを最新にアップデートします。
ファームウェアをアップデートするには
LANケーブルが接続されていることを確認します。
こちらのリンクから、下のページに移動します。
上図の型番リンクをクリックして、移動します。どの型番のリンクでもかまいません。
上の[ソフトウェア]リンクをクリックします。
「ソフトウェア」タブの「TeraStation 5000シリーズ ファームウェア アップデーター (Windows)」をクリックします。
下にスクロールすると表示される、[ダウンロード]ボタンを押します。本稿執筆時点のファイル名は「ts5000-v422.exe」でした。
「ts5000-v422.exe」をダブルクリックするなどして実行します。するとファイルの解凍が行われ、解凍先のショートカット「ts5000-v422」がデスクトップに作成されます。同時にブラウザに「TeraStation 5000シリーズ ファームウェア Ver.4.22」というタイトルのアップデート手順が記載されたページが表示されます。
ショートカットをダブルクリックして解凍先に移動します。
フォルダ「TS5000-v422」に移動します。
「TSUpdater.exe」を実行します。
ネットワーク上のTeraStationが検索されます。TeraStationが複数台ある倍は、上の画面の最上部のプルダウンメニューから選択できます。
「ファームウェア更新」ボタンを押すとパスワード入力画面が表示されます。
パスワードを入力し「OK」を押してください。なお、初期値は以下の通りです。
管理者:admin
管理者用パスワード:password
ファームウェアの転送と更新が開始されるので、完了するまで待ちます。
上の完了メッセージが表示されたら、アップデート完了です。
管理画面からの設定を行うには
ブラウザのURL入力欄にTS5600DSのIPアドレスを入力することにより、管理画面に入ることができます。IPアドレスは本体の液晶ディスプレイに表示されています。
ここで、初期パスワードを変更しておきます。
上のメッセージが表示されたら、パスワード変更は完了です。
筆者はローカルLANでの利用に限定したいので、上の設定は見送りましたが、後から設定することも可能です。
ディスクを構成した後の実容量は
前述したように、筆者はディスク構成を2台ずつ3組のストライピングにしました。その際の容量は以下の表の通りです。
「HDD」カラムは物理的な容量です。「実容量」は同じ容量のHDD 2台を1組にしてストライピングを組んだ際の、実際に利用可能な容量です。物理HDD1台当たり平均50GB程度の容量が管理用として使用されています。
スロット番号 | HDD | 実容量 (ストライピング) |
---|---|---|
1,2 | 400GB×2 | 341.2GB×2 |
3,4 | 320GB×2 | 266.7GB×2 |
5,6 | 160GB×2 | 117.7GB×2 |
合計 | 1,760GB | 1451.2GB |
さいごに
業務用のネットワークストレージデバイスは非常に高価ですが、中古で出回っている本体と余っているHDDで構築すれば、1万円強でNASを手に入れることができます。
ぜひ、皆さんも挑戦してみてください。