ダークウェブの世界を、比較的安全に覗くのに最適なOS Tailsを紹介します。Tailsで、あのTorを使えるようにするまでを丁寧に説明します。
本稿では、TailsをVirtualBoxで使用する方法を紹介します。
なお、Tailsは魔法のOSではありません。Tailsを活用していても、ダークウェブが100%安全になるわけではなく、正しい知識に基づいた慎重な操作が必要であることには変わりません。
プライバシーを守るtailsとは
TailsはOSの名称で、プライバシーと匿名性を守るために設計されています。Tailsを使用すると、パソコンには使用した痕跡が残らず、暗号化ツールが使用されているため、通信内容やファイルを保護することができます。
謎のネットワーク”Tor”とは
Tor(The Onion Router)は、インターネット上で発信元の秘匿性が高い通信を実現するためのソフトウェアです。Torは、元々アメリカの研究所で開発された技術で、現在は仕様や対応ソフトウェアがオープンソースとして公開されています。Torは、Onion、つまり玉ねぎのように何重にも層を重ねて暗号化を施し、接続経路を匿名化する性質から命名されました。Torを使用すると、インターネット上に構築されたTorネットワークを介して通信を行い、ユーザのアクセス元の場所、IPアドレスやアクセスしているサイト等を隠すことが可能となります。Torは、ランダムに決定される海外の中継サーバーを最低3つ経て、相手に情報が送られることで、誰からの通信かを調べにくくします。
Torの用途としては、重要な内部告発を匿名で送信する場合など、通信の秘密を保護するために使用されます。
使用したPCの仕様は
本稿では、以下のPC上の仮想マシンでTailsの動作検証を行いました。
メーカー 型番 | マウスコンピューター MDV-AGZ8000S-SH |
CPU | Intel(R) Core(TM) i7-3770K |
メモリ | 24GB |
SSD | 500GB |
OS | Windows 11 23H2 |
VirtualBoxをインストールしよう
VirtualBoxでTailsを使うメリットとは
Tailsはもともと、USBメモリにインストールし、USBから直接起動する「ライブ環境」と呼ばれる環境で使用することが前提で、設計されています。PCにUSBをさして起動すると、TailsがPCを占有してしまいます。VirtualBoxからTailsを使用できるようにすると、Windows等のホスト環境とTailsを併用できるため、よりPCが有効活用できます。
またセキュリティについては、Tailsがホストと分離して動作するため、一定の安全性は確保されていると考えられます。
VirtualBoxのダウンロード
こちらのリンクから、OSに適合したVirtualBoxのインストーラをダウンロードし、インストールしてください。
Tailsをダウンロードしよう
こちらのリンクをクリックして上図ページに移動します。下にある[Run Tails in a virtual machine]のリンクをクリックすると、以下のような画面が表示されるでしょう。
[Download Tails … ]のボタンをクリックすると、Tailsのダウンロードが始まるでしょう。VirtualBoxからTailsを起動できるようにしよう
Tails運用の基本的な考え方とは
前述の通り、TailsはUSBから起動されたライブ環境で動作することが前提で設計されています。Tailsを終了すると、それまでの情報は失われます。
TailsはSSD(HDD)にインストールすることはできません。
VirtualBoxで行う設定とは
スタートメニューから、VirtualBoxを起動します。
[新規]ボタンをクリックして、「仮想マシンの作成」画面を表示します。VirtualBoxで仮想マシンを作成する際、「ガイド付きモード」と「エキスパートモード」の二つのモードがあります。
ここでは、ガイド付きモードで仮想マシンを作成します。上記の画面が表示された場合は、[ガイド付きモード]ボタンを押してください。
上記「仮想マシンの名前とOS」画面では、次の入力を行います。
①「名前」を入力します。ここでは「Tails」としました。
②[▽]ボタンを押して[その他]を選択し、ダウンロード済みのTailsのISOイメージファイルを指定します。
③ISOイメージが保存されているパスとファイル名が表示されます。
④[次へ]をクリックします。
「ゲストOSの自動インストールのセットアップ」画面で、以下の入力を行います。
①ユーザー名を指定します。ここでは”linux”としました。
②パスワードを設定します。
③パスワードを再度、確認のため入力します。
④[次へ]をクリックします。
「ハードウェア」画面で以下の設定を行います。
①メインメモリーのサイズを2GB以上に設定します。ここでは4GBとしました。
②プロセッサー数を指定します。論理CPU数の半分を限度として割り当てると良いでしょう。ここでは4としました。
③[次へ]を押します。
「仮想ハードディスク」画面では、[仮想ハードディスクを追加しない]を選択します。
[次へ]を押します。
上記の画面が表示されます。メッセージ「ゲストインストールを実行できません」が表示されますが、これはTailsがストレージにインストールして実行するタイプのOSではないためで、問題ありません。メッセージの右側の[x]をクリックします。
画面上部の[設定]アイコンをクリックします。
[ディスプレイ]>[スクリーン]を選択し、「ビデオメモリー」のスライダーを最大にします。128MBになるでしょう。①[ストレージ]を選択します。コントローラIDEの②ディスクアイコンが「空」と表示されている場合は、③画面右のほうのディスクアイコンをクリックし、表示されたメニューから④[ディスクファイルを選択]をクリックしてダウンロード済みのTailsのISOイメージファイルを指定しなおします。
⑤[OK]をクリックします。
Tailsを起動しよう
上記画面の上部、[→]アイコンをクリックしてTailsを起動します。
しばらく待つと上の画面が表示されます。
[Keyboard Layout]をクリックします。
表示される一覧から[Japanese]を選択します。
次に[Start Tails]ボタンを押します。
画面サイズを変更しよう
上図のように、画面が遷移します。VirtualBoxの画面が狭いため、「Tor Connection」画面がデスクトップ全体を覆いつくしている状態です。デスクトップよりも大きいウインドウが表示しきれなくなっています。
そこで、「Tor …」画面を少し移動します。
①上のように、デスクトップを覆っている画面のタイトルバーをドラッグし、青いデスクトップ画面を表示します。②続いて、デスクトップ画面でマウスを左クリックし、メニューを表示します。
③[Display Settings]を選択します。
ここでは画面の解像度を変更し、使いやすいサイズにします。
[Resolution]をクリックし、お使いのディスプレイサイズに合った解像度を選択します。ここでは、[1920×1080]を選択しました。
問題なければ、[Keep Changes]を押します。
これで、ウインドウがデスクトップ画面からはみ出て、使いにくい状態から脱することができました。
Torへの接続設定を完了させよう
[Connect to Tor automatically]を選択し、[Connect to Tor]をクリックします。もう一つの選択肢の[Hide to …]は、国の当局からTorへの接続を禁止・あるいは監視されている場合などに選択するようですが、日本では左記(Connect to …)の設定で問題ないでしょう。しばらく待つと、上図のように接続が完了します。
上の図では見切れてしまっていますが、下のほうに[Start Tor Browser]ボタンがあるので押します。
ブラウザが起動されました。
上図のネットワークアイコンをクリックすると、3代の外国サーバを経由していることがわかります。
日本語を入力するには
デスクトップの最上部にあるメニューバーに[ja]などと表示されている部分をクリックすると、入力言語を切り替えることができます。
上図で、[Japanese(Mozc)]を選択します。
ブラウザ上で日本語入力ができるようになりました。
Tailsを終了するには
画面上部右にある電源アイコンをクリックし、[Power OFF]をクリックすると、システムが終了します。
これまで行ってきた設定など、すべての足跡が消去され、振出しに戻ります。この点にご注意ください。
最後に
ダークウェブにアクセスするうえでの準備作業を紹介しました。
Tailsでガードしていても、ダークウェブの世界はリスクが高いといえます。くれぐれも犯罪などに巻き込まれないよう、ご注意ください!