
DuckStationは、PlayStationTM(初代PS:PS1)のエミュレータ(エミュ)です。おそらく、PS1のレトロゲームをPCで楽しめるものの中では、最も評価の高いPSエミュでしょう。
DuckStationは22年12月ごろ、ユーザーインターフェイス(UI)が刷新されています。本稿ではいち早く、最新のDuckStationを紹介します。
DuckStationでは比較的低スペックのPCで遊べます。高性能PCでは画質をキレイに補正する機能を用いることにより、より快適に遊ぶことができます。
DuckStationを動作させるためには別途、「BIOS」と呼ばれるPS内蔵のプログラムが必要になります。本稿ではBIOSの入手方法については触れません。他のPS1エミュレータで遊んだことがある方は、そのときに使用したBIOSが使用できます。
ゲームソフトによっては、UI刷新前のDuckStationのほうが安定動作する場合があります。その場合は、下の記事を参考にしてください。
動作確認に使用したPCの概要
本稿執筆にあたって、DuckStationの検証に用いたPCのスペックは下の表のとおりです。
ESPRIMO D582/FWは、富士通の法人向けデスクトップパソコンです。中古ショップで4000円で購入しました。2012年発表のPCですが、HDDをSSDに換装し、メモリを16GBまで増設。Windows 11の厳しい動作要件をバイパスし、DuckStationの動作検証をしましたが、ほぼ問題なく動作しました。OSはSSDに格納しましたが、ゲームデータはHDDに格納したため、若干、読み込みに時間がかかり、一瞬ゲームのシーンが固まることがありますが、許容範囲と思いました。
メーカー/型式 | 発表時期 |
富士通 ESPRIMO D582/FW | 2012年11月発表 |
OS | CPU |
Windows 11 pro (Windows 8 pro) | インテル® Core™ i5-3470 プロセッサー |
メモリ | SSD/HDD |
16GB | 480GB/160GB |
グラフィックカード | スピーカー |
Intel® HD Graphics 2500 CPUに内蔵 | 外付け (なし) |
DuckStationのインストール方法とは
「VC++RT」をインストールしよう
こちらのリンクにアクセスします。
DuckStationのダウンロードページが日本語で表示されるでしょう。
DuckStationを実行するためには、Microsoft Visual C++ ランタイム ライブラリ(VC++RT)が必要です。下図の[Download VC++RT]をクリックして”VC_redist.x64.exe”ダウンロードします。

「ダウンロード」フォルダ等に保存されている”VC_redist.x64.exe”をダブルクリックしてランタイムのインストーラを起動します。
下の画面で、[ライセンス条項および…]にチェックし、[インストール]をクリックします。

下のような画面が表示されたら、ランタイムのセットアップは正常終了です。なお、[閉じる]ボタンの左隣に[再起動]が表示された場合は、実行途中のウィンドウが無いか確認後に再起動します。

もし下の画面が表示されたら
インストーラを起動したときに「セットアップの変更」画面が表示された場合は既にインストールされているので、[閉じる]ボタンをクリックし、インストーラを終了します。

DuckStationをインストールしよう
ダウンロードページから[Download Duck]をクリックして、”duckstation-windows-x64-release.zip”をダウンロードします。


ダウンロードしたファイルはZIP形式の圧縮ファイルです。エクスプローラからファイルをマウスで右クリックして[すべて展開]を選択し、解凍します。
あとは解凍したフォルダ”duckstation-windows-x64-release”を任意の場所に移動するだけです。私はフォルダ名を”duckstation”という短い名前に変えて配置しました。

DuckStationを起動してみよう
配置したフォルダにある”duckstation-qt-x64-ReleaseLTCG.exe”をダブルクリックして起動します。

次の画面が表示されたら、起動成功です。

MSVCP140_1.dll が無いというエラーの対処方法とは
MSVCP140_1.dll が無いというエラーが出ても、あわてる必要はありません。

上記既述の「「VC++RT」をインストールしよう」の項を参照して、DuckStationが使用するプログラムをダウンロードします。ダウンロードしたファイルを実行し、インストールします。再度、DuckStationを起動すればエラーは解消されているでしょう。
DuckStationを素早く起動するには

タスクバーにDuckStationのアイコンが表示されています。アイコンを右クリックし、[タスクバーにピン留めする]を選択して、次回から素早く起動できるようにしておきましょう。
日本語にしよう
DuckStationを日本語にするのは簡単です。
メニューバーから[Settings]>[Language]>[日本語]を選択します。

日本語が表示されました。上図の初期起動画面から遷移してしまいますが、心配いりません。

ここでDuckStationをいったん終了して、DuckStationを再度起動すると、DuckStation初期起動時の画面が、日本語で表示されます。
ゲームの一覧を表示させよう
あらかじめ、吸い出したゲームのソフトを用意し、任意のフォルダに格納しておきます。
次に[ゲームディレクトリを追加]をクリックしてみましょう。

ゲームのソフトが入っているフォルダを指定して[フォルダーの選択]をクリックします。

サブディレクトリ(フォルダ階層の下にあるフォルダすべて)を検索するかを聞かれます。便利なこともあるので、私は「はい」を選択しました。

以下のように、用意したゲームがリストで表示されました。ゲームの吸い出し方によって、同一のゲームが2行表示されるようです。図の「Serial」列が同じであれば、同じゲームで同一のDVDです。

ツールバーを表示するには
DuckStationは22年12月ごろにユーザーインターフェース(UI)が刷新されました。デフォルトの画面では各機能のアイコンが表示されているツールバーが省略されています。ツールバーを表示するには、メニューバーから[表示]>[ツールバー]を選択します。

これでツールバー上のアイコンが表示されるようになりました。
なお、以降ではデフォルトのツールバーがない画面で説明をします。

BIOSを設定しよう
実はこの時点ではまだ、ゲームを起動できません。あらかじめ準備したBIOSを所定のフォルダにセットアップする必要があります。
DuckStationは初回起動時に「ドキュメント」フォルダにファイルを作成します。
エクスプローラを起動し、[ドキュメント]>[DuckStation]>[bios]の順にフォルダを移動します。このbiosフォルダに、あらかじめ準備しておいたBIOSファイルを配置します。

メニューバーから[システム]>[BIOS起動]をクリックします。

次の画面が表示されればBIOSの設定は完了です。

ゲームの起動確認をしよう
この時点で、ゲームが正常に起動できることを確認しておきます。
メニューバーから[表示]>[ゲームリスト]をクリックしてゲームの一覧を表示します。

一覧に表示されたゲームをダブルクリックすると、ゲームが起動します。

「ディスク交換の確認」画面が表示されたら、[ディスク交換]をクリックします。まだ一度もゲームを起動していない場合でも、下の画面が表示されることがあります。

ゲームが起動できました。

ゲームパッドを設定しよう
ひとまず、DuckStationを終了し、ゲームパッドをPCに接続します。ここでは、PS5純正品の「DualSense ワイヤレスコントローラー (CFI-ZCT1J01)」と「Logicool Gamepad F310」を試します。
コントローラの接続後にDuckStationを起動して、[設定]>[コントローラー]を選択します。

下の画面が表示されるので、認識されているコントローラを選択します。下の場合は、[コントローラーポート1]です。

次の画面が表示されます。
画面から、キーボードの各キーが割り当てられていることが確認できます。

DualSense ワイヤレスコントローラー (CFI-ZCT1J01)を設定するには
①画面左端にある[コントローラポート1]タブが選択された状態のまま、②「コントローラータイプ」を接続したゲームパッドの仕様に応じて選択します。CFI-ZCT1J01のコントローラタイプは、[デジタルコントローラー]です。
コントローラタイプを設定後、③[自動マッピング]をクリックします。続いてポップアップ表示されたメニューから④[SDL-0]を選択します。
もし、ボタン配列を変更したい場合は、画面上の任意のボタンをクリックしてから5秒以内にゲームパッドのボタンを押すという操作で変更することができます。
最後、⑤[閉じる]をクリックします。

Logicool Gamepad F310を設定するには
画面左端にある[コントローラポート1]タブが選択された状態で、「コントローラータイプ」を[デジタルコントローラー]にします。
次に[自動マッピング]をクリックし、ポップアップ表示されたメニューから[SDL-0]を選択します。
F310は背面にDirectInput(D)とXInput(X)を切り替えるスイッチがあります。今回検証したところ、どちらに切り替えても、上記の設定でゲームパッドの操作に違いはありませんでした。

一部でXInputを有効化しないと対応できないケースがあるようです。その場合は、F310の場合は背面のスイッチを「X」にしたうえで、下図のようにコントローラ設定の[グローバル設定]タブから、Xinputカテゴリの[Xinputを有効化]をチェックします。
F310

[コントローラポート1]>[自動マッピング]>[Xinput-1]と、XInputが選択できるようになりました。
F310では、SDLでもXinputでも動作可能でした。一方で、XInputをサポートしていないコントローラでは、XInputを有効化しても[自動マッピング]のメニュー候補にXinputは表示されないようです。

ボタンの配置が思った通りに設定されていなかったり、配置を変更したい場合は、下の画面で①任意のボタン位置をクリック、②ゲームパッドのボタンを押す、という操作で、好みのボタン位置にカスタマイズが可能です。

上記のほかにも、ニンテンドー用のゲームパッドなど、いくつか試しましたが、いずれも上記の手順で使用できるようになりました。
ゲームの起動と終了
ゲームは下の画面のように一覧で表示されます。
前述の通り、ゲームをROMから吸い出したときの出力ファイルの形式により、DuckStationでの一覧表示形式が異なるようです。CD-ROM1枚当たり1行で表示される場合と、2行表示される場合が確認できました。
図の「Serial」列が同じであれば、同じゲームで同一のCDです。

リストのどれでも、ダブルクリックするとゲームが起動できます。

終了するにはメニューバーの[システム]から[電源オフ]を選択します。

下のダイアログから[はい]を選択すると、ゲームが終了してゲーム一覧の画面に戻ります。ここでステートセーブ(現時点の状態を保存)の有無を指定することもできます。

解像度を増やしてキレイにしよう
DuckStationには「アップスケーリング」という機能があります。映像を元の大きさよりも多い画素数に変換してくれるので、大きなサイズのウインドウに表示しても違和感なくゲームを楽しめます。
メニューバーの[設定]>[拡張]を選択します。
[レンダリングの機能強化]グループの[内部改造スケール]を変更します。どこまでスケールを拡大できるかは、ハードに依存するでしょう。

続いて、[PGXP]グループの下図の5つの項目にチェックを入れます。PGXPというのは、描画する際の「歪み」を補正する機能です。

ゲームのセーブとロード
DuckStationのステートセーブ機能を用いると、ゲーム中のどの場面でもセーブすることができます。
ゲームの状態をセーブするには
[F2]キーでセーブできます。メニューからセーブする方法は下の図の通りです。

ゲームをロードするには
ゲーム起動時に下の図のダイアログが表示され、[ステートロード][新規に起動][削除して起動]などが選択できます。[削除して起動]を選択してゲームを起動した場合、そのままセーブせずにゲームを終了すると、上述のダイアログが表示されなくなるようです。何が便利なのか、よくわかりませんでした。
ゲームリストをマウスで右クリックして、メニューから[ステートロード]>[ゲームセーブ1]などを選択してもロードすることができます。

ゲーム実行中の場合は、[F1]キーでロードできます。もちろん、メニューからも可能です。

チートを活用するには
DuckStationではなんと、チートを自動でダウンロードしてくれます。
チートとは、ゲームを有利に進めるためにゲーム(のデータ)を書き換える裏技のようなものです。HPを無限にするといったことが可能になります。一般的なエミュはWEBでチートコードを検索し、エミュレータに読み込ませる必要がありますが、DuckStationは自動でダウンロードしてくれるので、その必要が無いことが多いです。ただし、ダウンロードしてくれないゲームもあります。
メニューバーから[ツール」>[チートマネージャ]をクリックし、[チートマネージャ]を選択します。

途中、チートはゲームに不具合を生じさせる可能性があることを警告するメッセージが出ます。[はい]をクリックして続けます。

「チートマネージャ」により、チートの説明が英語の一覧で表示されます。

下の図のように、チートにチェックを入れると、そのチートが有効化されます。

なお、チートが自動的にダウンロードされないゲームなどでは、WEBで見つけたチートコードなどをDuckStationに読み込ませることも可能です。その場合は「チートマネージャ」の「コードを追加」を選択し、チートを入力します。
便利なショートカットは
DuckStationではゲームプレイ中に様々な機能がショートカットで使えます。DuckStationではショートカットを「ホットキー」と呼んできますが、ここでは「ショートカット」に統一します。
使用できるショートカットの中で、特に頻繁に使用するものを下の表に挙げます。
なお、ショートカット欄が「定義可」のものは、最初ショートカットキーが割り当てられていません。以降で説明するショートカットの設定で任意のキーを割り当てることができます。
機能 | ショートカット |
---|---|
一般 | |
一時停止してメニューから次の機能を選ぶ ・再開 ・早送り ・Load/Save ・チート有効/無効の切り替え ・スクリーンショットを保存 | [Esc] |
[Tab]を押下中、早送り | [Tab] |
フルスクリーンON/OFF | [F11] |
一時停止/再開 | [Space] |
スクリーンショットを保存 | [F10] |
システム | |
コマ送り | 定義可 |
巻き戻し【注】追加設定が必要 | 定義可 |
チート有効/無効の切り替え | 定義可 |
音声 | |
音声を上げる | 定義可 |
音声を下げる | 定義可 |
ステートセーブ | |
ステートロード | [F1] |
ステートセーブ | [F2] |
特に「巻き戻し」機能が便利です。時間を戻して何度でもやり直しができるからです。また「音量を下げる」等の機能もよく使用します。どのゲームでもサウンドはかなり大きめに設定されているので、家庭環境では音量を頻繁に調整する必要があるからです。
ショートカットを定義するには
ここでは「巻き戻し」のショートカットキーを[←]に割り当ててみます。
[設定]>[ホットキー]を選択します。

下の画面、左ペインで[ホットキー]が選択されていることを確認します。右の「巻き戻し」に対応するボタンをクリックすると、ボタン上で5秒間のカウントダウンが始まります。この5秒間の間にキーボードの[←]を押すと、「Keyboard/Left」と表示されて、巻き戻し機能が[←]に割り当てられます。
なお、巻き戻しの場合は、別の設定画面で巻き戻しを「有効化」する必要があります。

「巻き戻し」を有効化するには
巻き戻しは、DuckStationが一定時間の画面のデータ(フレーム)を覚えておく(バッファリングする)ことで実現しています。DuckStationの初期設定では10秒程度の過去にさかのぼることができます。設定を変更することにより、もっと前まで戻ることも可能ですが、システムの負荷が高くなります。
[設定]>[エミュレーション]を選択して設定画面を開きます。
左ペインの[エミュレーション]が選択されていることを確認し、右の[巻き戻しを有効化]にチェックを入れます。
「巻き戻し保存頻度」「巻き戻しバッファサイズ」の数値を大きくするとシステムのリソースが多く消費されることになるので、実際にゲーム上で確かめながら、これらの値を決定するのが良いでしょう。

さいごに
それでは、PS1のレトロゲームをPCでお楽しみください!