ITストラテジスト:2018年 午後Ⅰ 問1

AIの機能を活用した新サービスの検討

証券会社のコールセンターのサービス高度化をテーマに、現状分析、新サービスの検討、新サービスの導入効果を答える問題。
IPAの平成30年(2018年)度 秋季試験 午後Ⅰ問題リンク


IPAの解答例

設問1: (1) 表示する回答候補の精度が向上するから
    (2) 回答候補がない場合にオペレータが自ら探した回答のデータ

設問2: (1) 新サービスによって自ら問題を解決できること
    (2) 顧客へのコールバックに切り替えることで解決できた質問及び回答

設問3: (1) 全体の問合せに対するチャットボットへの問合せの割合
    (2) 作業内容:メールによる問合せへの回答
      効果 :時間外勤務による業務コストの削減

残念な回答例

設問1: (1) AIの機能が回答候補を表示し、迅速に回答できるから
    (2) FAQやオペレータ用のリファレンスマニュアルから回答した内容

設問2: (1) 問合せの回答をいつでも待たされずに得られること
    (2) 頻繁にある質問や調べるのに時間を要する質問、FAQ等にない質問など

設問3: (1) 全問い合わせ件数中、チャットボットが利用されている割合
    (2) 作業内容:受付時間外のメールによる問合せへの回答
      効果 :電話とメールの減少による時間外勤務の減少

解答の検討

設問1 (1)

AIの機能によって、オペレータの問合せへの対応品質が向上していく「理由」を回答する。AIの機能により複数の回答候補が用意され、表示される。また、オペレータが選択した回答は記録され、AIが学習して、表示する回答候補の精度が向上していく。ここで対応品質というと、回答するレスポンスの迅速性を答えるか、AIの回答候補の精度を答えるかで迷う。設問の趣旨としては対応品質が継続的に向上していく理由を求めているので、AIによる学習効果によって回答候補の精度が向上することが、対応品質が向上する「理由」と読み取る必要がある。よって、「 表示する回答候補の精度が向上するから 」が正解。


設問1 (2)

AIが用意した複数の回答候補のどれを選択したかが、AIにフィードバックされ、精度が向上するわけであるが、それ以外に活用すべきデータを答える設問。AIが回答候補を示せなかった場合や、回答候補に適切な回答が無かった場合は、「オペレータはFAQやオペレータ用のリファレンスマニュアルから探して回答する」とある。
「 回答候補がない場合にオペレータが自ら探した回答のデータ 」が正解。


設問2 (1)

新サービスによって顧客のどのようなニーズに応えようとしているかを回答する。
顧客は少ない労力で素早く疑問を解消したいと思っている。ここで、「365日24時間質問を受け付ける」などの回答が頭をよぎるが、この回答では顧客のニーズの実現手段になってしまう。[新サービスの検討]には、「問い合わせをする前に、FAQやヘルプの検索などのセルフサービス機能での解決を試みていることが分かった」と記述されており、自ら問題を解決しようとしていることがヒントとして示されている。電話やメールよりさらに手軽に解決できることがニーズととらえると、 「新サービスによって自ら問題を解決できること 」が正解となる。

設問2 (2)

チャットボットだけで解決できる顧客を増やすために、AIに学習させるべきデータとは何か。
[新サービスの検討]に、「チャットボットだけで解決できない場合は、顧客へのコールバックに切り替えることで解決」と書かれている。おそらく、オペレータから顧客に、電話やメールでオペレータが探した回答を返していると思われる。この回答をチャットボットで解決できるようにしなければならない。
よって、「 顧客へのコールバックに切り替えることで解決できた質問及び回答 」が正解。

設問3 (1)

導入効果を測定するための指標として、チャットボットの利用状況に関するKPIを答える。
[新サービスの導入効果]を見ると、導入効果が確認されれば「オペレータによる問合せへの対応を平日にする計画である」とある。顧客満足度を低下させずにこれを実現するためには、チャットボットによって電話やメールが少なくなっている必要がある。これが確認できるKPIが正解となる。チャットボットが利用される割合が多く、それが有効に機能していれば、相対的にメールや電話は減少する。
「 全体の問合せに対するチャットボットへの問合せの割合 」が正解。

設問3 (2)

業務コストが抑制できる要因を答える設問。
冒頭部分に「電話による問合せに対応するオペレータが、手すきの時に、メールに回答する。」とあり、[電話による問合せ対応の現状]には「電話による注文の件数が多い場合、<略>注文への対応へシフトさせるので、問い合わせへの対応が手薄になるという問題を抱えていた。」とある。
[メールによる問合せ対応の状況]を見ると、「電話による問合せが多い日は、受付時間内に<略>時間が取れないこともある。<略>時間外勤務をして、<略>」とある。「時間外勤務によって、業務コストも増加している。」とも記述されている。チャットボットが広く利用されるようになれば、電話やメールでの問合せが減ることが期待され、メールの回答を行う作業を時間外で行う頻度も減少するだろう。
よって、作業内容は「 メールによる問合せへの回答 」が正解。効果は「 時間外勤務による業務コストの削減 」が正解。


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です