東京と思われるなぞの場所、マンションの一室。そこには不気味な黒い球体が存在する。そこは、本来なら死ぬはずだった人々が転送される場所である。転送された彼・彼女らは特殊なスーツと武器とともに、地球上に跋扈するエイリアンを殺す任務が与えられる。任務が遂行されている間、世界中の人々から彼らの存在が見えない。任務は致命的といえるほど難度が高く、生き残る参加者はほとんどいない。残酷な指令を出す球体。その名は…ガンツ。
Gantzの世界観
「GANTZ」(ガンツ:本稿ではGantz)は、奥浩哉(おく ひろや)によって作られた日本のSF漫画です。2000年から2013年まで「週刊ヤングジャンプ」に連載されていました。
死んでも生まれ変わって2度目のチャンスが与えられ、人生を続けることができるとしたらどうでしょう。ただし、生まれ変わるためには過酷なサバイバルゲームに参加するという条件付きです。参加者には、超人的な力を与えてくれるスーツと、敵であるエイリアンを殺すための武器が与えられ、任務には逆らえません。今後「日常生活」を続けるためにはエイリアンを殺さなければなりません。そして、二度と死ぬわけにはいきません。なぜなら、二度目の死は永遠の死を意味するからです。
これが、Gantzの初期のプロットです。
キャラクター設定
疎遠になっていた友人同士の玄野計と加藤勝が、地下鉄でホームレスの男性を助けようとして電車に轢かれてしまいます。ところが、死んだはずの二人は東京のマンションの一室に転送されます。体には傷一つありません。
そして部屋の真ん中には、ガンツと呼ばれる謎の黒い球体が存在し、玄野計と加藤勝同様、直前に死を経験した人たちが、球体とともにたむろしています。いったい何が始まるのでしょうか?
転送された人々は、ガンツからエイリアンの標的と戦う任務を与えられます。
戸惑う皆は最初、ドッキリ番組の撮影かと疑いますが、いやおうなしに血まみれのミッションが始まり、そんな甘い状況ではなことを思い知らされます。そしてエイリアンと死闘のうえ、任務が完了すると皆はガンツのもとに呼び戻されます。そしてそこで、100 ポイントを集めるまで任務を繰り返す必要があることを知ります。
- ポイントはガンツの「採点」結果に応じて与えられる
- 100 ポイントに達すると、「ゲーム」をコンプリートしたと判定される
- 満点プレイヤーは記憶を消去されたうえで「ゲーム」から抜け出し、普通の生活に戻ることができる
- 普通の生活に戻る以外に、失われたチームメイトを復活させたり、武器をアップグレードする選択肢も選べる
Gantzで描かれるバイオレンス
暴力や性的な描写は過激といえます。本作は週刊青年漫画雑誌「週刊ヤングジャンプ」に連載されており、この雑誌の創刊時の編集方針は「(性を内包した)愛・暴力・権力(からの解放)」ということで、この作品もおそらくですが、女性の読者はあまり想定されていません。
この物語では誰でも死ぬ可能性があります。主人公であれ、脇役であれ、お構いなしです。
ガンツからの任務で始まるこの「ゲーム」は残酷で、エイリアンを殺そうとしたり、エイリアンから逃げようとしている人々が死ぬ場面は頻出すると言えます。かなりリアルで残酷なので、そのような描写が苦手な方は、読むのを避けたほうがよいかもしれません。
Gantzのキャラクターたち
加藤はモラルと正義感が強く、全員を無事に生還させたいと望みます。
それに比べて玄野はドライで利己的といえます。その時々の状況で、自分本位な考えと他人のために犠牲してでも守ろうとする気持ちで揺れ動きます。
たとえば、好きな女性を振り向かせたいと思い、玄野はガンツのミッションに参加て英雄になりたいと考えます。
参加者に与えられるスーツには、肉体的な強靭さと敏捷性を増幅する機能があるため、この機能と運があれば、小さな子供でも、老人、パンダでさえスーパーマンになることができるのです。
誰もが悲痛な死を迎える可能性のあるミッションの遂行を、まるでスマホの中のゲームの世界のように誤解してしまう、危うさを伴うストーリーが展開されます。
その意味で、メインキャラクターの 1 人である玄野計は、決して優等生ではなく、利己的かつ感情的な欠点が目立つキャラクタとして作り込まれています。ある意味、人間の本質を際立たせているのかもしれません。
玄野計は自己中心的な行動と葛藤を繰り返しながらも、彼自身の内側から徐々に変化が生じてきます。
そして、異なる世代や人生経験を持つ仲間と生き残りを賭した時間を共有する中で、奇妙な友情や愛情が芽生えます。
Gantzの特徴といえるのが、主人公以外の脇のキャラクターも大切にされていることです。さまざまな人々との出来事や関係によって引き起こされる心の変化が巧みに表現されています。
おわりに
「GANTZ」は非常に暴力的でグロテスクな描写が多いため、大人向けの作品です。ただ、過激なだけではなく、主人公たちは葛藤を繰り返したうえ成長する姿を描いており、深い感動を味わえる作品でもあると言えます。