システムの投資対効果の検証制度を対象とした監査
システムの投資対効果を判断し、経営判断に生かすための制度として機能するかを見立てるための、監査の視点、監査手続きの実施能力を問う問題。
IPAの平成30年(2018年)度 春期試験 午後Ⅰ問題リンク
IPAの解答例
設問1:システムを利用し業務を遂行する主管部門がシステムのオーナとなっているか
設問2:
(ⅰ) ユーザ部門の教育費用
(ⅱ) ゲートシステムの登録内容を閲覧し、費用項目の網羅性及び入力必須設定を確認した。
設問3:投資委員会によるゲートでの審査に明確な判断基準があること
設問4:プロジェクトの特性に応じて投資対効果を測定する時期が定められていること
設問5:プロジェクトに利害がある者が審査に関わっていないこと
残念な解答例
設問1:プロジェクト企画のターゲットに合致したシステムオーナが記載されていること
設問2:
(ⅰ) プロジェクトの計画・管理費用
(ⅱ) プロジェクトの企画・計画・管理それぞれについての費用計上とその承認が実施されているかの確認
設問3:投資委員会が判断した判定結果に対する理由が示されていること
設問4:現在実行中のプロジェクト数と完了する見込み時期から対象数が出揃う時期を確認
設問5:各ステージの妥当性の判断を適切に行うスキルを保有していること
解答の検討
設問1
[ステージゲートの概要]の(6)に、「システムオーナを明確にする」とある。また、[予備調査の概要]の(2)に「投資対効果を検証する責任部署が明確でなかった」ことが判明している。それを受けて、(4)には「投資対効果についての責任部署を明確にすること」が目的として挙げられている。以上から、「システムを利用し業務を遂行する主管部門がシステムのオーナとなっているか」になる。
設問2
(ⅰ)
表1「各ステージとゲートの概要」と[本調査の概要]の(2)に「機器導入費用、システム開発費・運用費」の記載がある。これ以外に考えられる費用を答えることになるので、「ユーザ部門の教育費用」となる。教育する側と受ける側のトータル費用になるが、SIベンダだと通常システム開発費の中に見込むので、少し悩む解答者がいたかもしれない。「ユーザ部門による運用試験費用」なども考えられるが、システム開発費に含まれるかどうかは意見の分かれるところだろう。
(ⅱ)
(ⅰ)で費用項目の不足を懸念した監査人が「費用項目の不足が発生しないためのコントロール」を確認するために何を閲覧して何を確認したかを答える必要がある。「ゲートシステムの登録内容を閲覧し、費用項目の網羅性及び入力必須設定を確認した」となる。(ⅰ)で回答した費用項目が漏れていないか、という回答をしてしまうと不正解。
設問3
[本審査の概要]の(3)に「システムオーナから判定理由を求められ、R部長が理由を説明」とある。また、同じく(3)に「”条件付き承認”の判定を受け、”承認”の判定を受けたプロジェクトとの違いがわからない、という意見があった」と記載されている。判定の理由や違いがわからないということは、審査の判断基準に揺らぎがある懸念がある。一律の根拠に準じた判断がされているかを確認する必要があると考えるべきである。よって、「投資委員会によるゲートでの審査に明確な判断基準があること 」が解答となる。
設問4
ステージ5では「システム運用費の実績、費用対効果の実績」を評価するステージである。[本審査の概要]の(4)に「監査部が審査の状況を確認する時期に至っていない」ので「各プロジェクトの審査時期について確認」するとある。ここで、対象となるシステムが基幹系か情報系かなど、プロジェクトの特性によって投資対効果などの実績が判明する時期が異なる。よって、「 プロジェクトの特性に応じて投資対効果を測定する時期が定められていること 」が求められる。
設問5
実効性がある審査が行われないリスクに対して、審査実施者に求められることが問われている。適切な審査実施者が審査に望まなければならない。ここでは監査人同様、「プロジェクトに利害がある者が審査に関わっていないこと 」が解答になる。また、IPAの講評では「システム開発や業務に知見のあるものが実施することが望ましい」とも書かれているので、「残念な解答例」の解答でも部分点は取れたと思われる。
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