古いPCに最新Windwos 11 24H2をクリーンインストールするには

  • 最新OSを格安で、しかも比較的快適に使用できるようにする裏ワザを紹介します。
  • 11年前に販売されたデスクトップPCに、24年10月リリースされたWin11リリース24H2をインストールします。
  • 主にMicrosoft OfficeとWebブラウザ、仮想環境を使用する用途を想定しています。

ノートPCとデスクトップPCのどちらがおすすめ?

ノートPCはWiFiをはじめ、ディスプレイやスピーカなど、必要なものがほぼすべて装備されています。外に持ち歩きたいというニーズがあるなら、ノートPC一択でしょう。
ディスプレイやスピーカをすでに保有していて、腰を落ち着けて作業ができるなら、デスクトップPCがおすすめです。同じ年に販売されたPCを比較すると、ノートPCよりもデスクトップPCのほうが安くてスペックが高い場合が多いからです。ノートPCはコンパクトな分、性能が控えめといえます。

11年前の中古PCの仕様は

本稿では、富士通 ESPRIMO D582/FW(以降、D582/FW)を使用します。中古ショップで購入しました。24年10月現在の中古市場では4千円台くらいからあるようです。
選択したポイントとしては、D582/FWは業務用PCとして設計され、WindowsのProが採用されている点です。ProがインストールされていたPCは、後述の方法によりWindows 11 Proをインストールすることができます。

D582/FWの発売日は2013年9月のようです。
主な仕様は以下の通りです。

新品購入時中古購入時
OSWindows 8 Pro(64bit版)なし
CPUインテル® Core™ i5-3470
プロセッサー
同左
メインメモリ標準2G
最大16G
8G
グラフィックアクセラレーターIntel® HD Graphics 2500(CPUに内蔵)同左
ハードディスクドライブ250GB(7200rpm、Serial ATA/600)同左
スピーカーなしなし
キーボード/マウス付属なし

どんなPCに仕上げるの?

上記のD582/FWを、MS Officeによる文書作成、Webの閲覧、YouTube視聴などに使用できるものにします。
また、ブログの記事を作成する際に、VirtualBoxなどを用いて仮想環境を構築することがあります。仮想環境を構築できるだけのリソースを確保します。その場合は、ゲームをするわけではないので、少々遅くても問題ありません。
上記のような用途に使用できるPCに改造します。
ただし、中古PCを活用することと、後述するWindows 11のシステム要件を回避してインストールすることには、一定のリスクがあると考えられます。その点は自己責任でお願いします。

中古PCにWindows 11をインストールする際に考慮すべきこととは

無料でWindows 11を使う抜け穴とは

D582/FWは、Windows 8.1 Proが動作していたPCです。そのため、これまではWindowsのデジタルライセンス認証により、Windows 11 Proにアップグレードできました。
ところがMicrosoft(MS)は23年9月20日に「Windows、Windows 7/8の無料アップグレードのインストールパスを終了」との発表を行っています。要はWindows 7/8の正規ライセンスを持っていても、無条件でのアップグレードができなくなったということです。ここで過去、Windows 10へのアップグレードを無償期間で行っていたPCであれば、従来通りWindows 10または11の再インストール時に認証されます。
では、過去にWindows 10などにアップグレードしたことのないPCの場合は、アップグレードが絶望的なのかというと、どうもそうでもなさそうです。デジタルライセンスによる自動的な認証は停止しているものの、テクニカルサポート経由の電話によるやり取りで、アップグレードを可能にしているという情報があります。
本記事では上記の情報についての検証を行っていません。今回検証に使用する中古PCはすでに一度、Windows 11 22H2をインストールしたことがあるため、デジタルライセンスで自動認証されるケースとなります。

Windows 11のシステム要件を回避するには

中古のPCを購入し、Windows 11で使用したい場合、Windows 11のシステム要件を満たしているかどうかを事前に確認する必要があります。Windows 11のシステム要件には、例えば以下のものがあります。

  • システム ファームウェア:UEFI、セキュア ブート対応。
  • TPM:トラステッドプラットフォームモジュール(TPM)バージョン2.0。

本稿で扱うような10年以上前のPCでは、まず上記の要件を満たしていません。その場合、Windows 11をインストールすることはできません。ただし、一部の制約を回避する方法があります。本稿ではその方法を用いて、要件の回避を行います。
ここであらかじめ注意いただきたいことがあります。この要件回避方法は互換性などの問題が発生する可能性があるため、Microsoftはこの操作を推奨していません(メーカー保証外)。また、セキュリティ更新などの更新プログラムの受信が保証されていません(現時点では受信できることを確認済みです)。

Windows 11のシステム要件を回避することによるデメリットは

システム要件を回避して中古PCにWindows 11をインストールすることで考えられるデメリットは次の通りです。

  1. Windows 11の大型アップデートで更新することができない
    セキュリティなどの更新は現時点では実施されます。しかし、Windows 11の年次アップデート、具体的には24H2の次への大規模アップデートは自動で行えないと思われます。再び、システム要件の制約を回避する何らかの方法でアップデートを行う必要があると考えられます。
  2. Microsoftの方針変更で、非対応PCに対する新たな制約が生じる可能性がある
    24H2から、Core 2 Duoを搭載したPCは動作できなくなりました。これは、24H2が「POPCNT」という命令をサポートしていない古いCPUでの起動を拒否するためです。この命令は、最新のWindowsコンポーネントに必要とされており、Core 2 Duoのような古いCPUでは対応していないためです。
    つまり現在、24H2がシステム要件を回避すれば動作すると考えて購入した中古のPCが、次の大型リリースでは動作しないというリスクがあると言えます。

どんなハードウェアを足すと効果的?

ハードウェアを「ちょい足し」して、サクサク使用できるPCに仕上げたいと思います。

起動を早くしたい

最も効果的な方法は、HDDからSSDへの交換です。本稿では480GBのSSDに交換しました。23年10月時点で新品で3千円くらいから販売されています。
ここで、D582/FWのHDDは3.5インチなので、2.5インチのSSDを取り付けるためには、「2.5インチ → 3.5インチ 変換ブラケット」を使用します。SSDに下駄を履かせてHDDのサイズにしてマウントするわけです。変換ブラケットは315円くらいから販売されています。

仮想環境を構築したい

メモリを増設します。Officeを使用するくらいなら、8GBあれば問題なく動きますが、仮想環境はサーバだと2~4GB、デスクトップ環境だと8GB程度のメモリが必要になります。すると、トータルで16GBくらい必要になります。幸い、仕様上は最大16GBメモリを搭載できるので、16GBとします。使用できるメモリは「PC3-12800 DDR3 SDRAM DIMM CL11 ECCなし」とマニュアルに記載されています。
新品だと16GBで、2,600円くらいから販売されているようです。筆者は余ったメモリで相性のよさそうなものをかき集めて活用しました。

取り付け手順は、ESPRIMO D582/FW 本体マニュアル 「製品ガイド」を参照ください。

無料でWindows 11をインストールしよう

Windows 8 のPCでも、過去にWindows 10をインストールしたことがあるPCであれば、デジタルライセンスを使用してWindows 11を認証することが可能です。Windows 10とWindows 11は基本的に同じライセンスを使用しているため、Windows 10のデジタルライセンスはWindows 11にも適用されます。

ブータブルUSBを作成しよう

Rufusを入手するには

Rufusとは、起動可能(ブータブル)なUSBメモリを作成するためのフリーソフトです。Windows以外にも、各種LinuxディストリビューションやBSD系OS、DOSなど、幅広いOSをサポートしています。Rufusは、OSのISOイメージファイルをUSBメモリへ書き込んでインストールメディアを作成することができます。Rufusは、メディアを作成するスピードが、他のソフトと比較して速いと言われているようです。

Rufusを使用するには、公式サイトからダウンロードし、実行ファイルを起動します。インストールは不要です。

USBメモリを用意しよう

Rufusを用いて、起動可能なWindows 11インストーラを作成します。インストーラはUSBに格納します。Windows 11のISOのサイズは5GBを超えます。したがって、USBメモリの容量は8GB以上のものを準備します。

Windows 11をダウンロードするには

Rufusを起動します。
①「ドライブ プロパティ」領域の「ブートの種類」右の[▼]ボタンをクリックし、[選択]から[ダウンロード]に変更します。次に[ダウンロード]をクリックすると「ISOイメージのダウンロード」画面がポップアップ表示されます。
②「バージョン」のプルダウンメニューから[Windows 11]を選択します。
③[続ける]をクリックします。

「リリース」が追加表示されるので、24H2を選択して[続ける]をクリックします。

「エディション」が追加されるので、確認して[続ける]をクリックします。

「言語」が追加されるので、[日本語]等を選択して[続ける]をクリックします。

「アーキテクチャ」が追加されるので、確認して[ダウンロード]をクリックします。

ダウンロード中は上の画面のように、経過が表示されます。

上の画面でダウンロード完了です。
「ダウンロード」等のフォルダに
Win11_24H2_Japanese_x64.iso といったファイル名で格納されるでしょう。

Windows 11のインストールUSBを作成するには

①USBメモリをPCのUSBスロットに挿入します。
②[▼]ボタンで[ダウンロード]から[選択]に変更し、[選択]をクリックします。続いて、ダウンロード済みWindows 11のISOファイルを選択します。
③「ブートの種類」に正しくWindows 11のISOファイル名が表示されていることを確認します。
④パーティション構成が[GPT]か、[MBR]かを選択します。GPTはUEFIシステムでのみブート可能で、MBRはBIOSシステムでのみブート可能です。今回の記事で使用したPCはUEFI対応なのでGPTにしました。ちなみに本稿でのPCでは、MBRで作成したインストーラだと、途中でエラーになりました。
⑤[スタート]ボタンをクリックします。

上の画面が表示されます。
①ハードウェア要件を回避するためにチェックを入れます。
②Microsoftアカウントによるログインを回避します。
③ローカルのアカウントを作成します。初回ログインの際にパスワードの設定画面が表示されます。
④「日本の東京」などのロケーションをRufusを起動したPCと同じに設定します。
⑤スペックの低めの旧型PCなので、少しでも軽くするためにデータ収集を無効にします。

⑥BitLockerとは無縁の古いPCなので無効化します。

必ずチェックが必要な項目は①です。旧型PCでは①をチェックしないと、Windows 11の要件に抵触してインストールできません。
②~⑤は効率的にインストールができるように、セットアップ画面をスキップするための項目です。すべてチェックすると最速でセットアップが完了します。ご自身の判断でチェックの有無を判断していただいて構いません。

USBのデータがすべて消去される注意が表示されます。それで良ければ、[OK]を押します。

USBインストーラの作成が完了するのを待ちます。

「状態」が「準備完了」でインストーラの書き込み完了です。[スタート]は押さないでください。

USBメモリからPCを立ち上げよう

これから、rufusで作成したインストール用USBから起動します。通常のPCでは、USBドライブから起動しない設定になっていることが多いため、設定を変更する必要あります。
以下の手順は、特定のパソコンの機種に依存しない一般的な手順です。起動デバイスの優先順位をHDD/SSDよりもUSBメモリの方を高くする方法です。

  1. USBメモリをPCに挿入します。
  2. PCを起動し、BIOS設定画面に入ります。BIOS設定画面に入る方法は、PCの機種によって異なりますが、一般的にはPCの電源を入れた直後に、F2、F10、F12、ESC、DELなどのキーを押すことで入ることができます。
  3. BIOS設定画面で、ブートの優先順位を変更します。ブートの優先順位を変更する方法は、PCの機種によって異なりますが、一般的には「Boot」タブを選択し、USBメモリを最優先に設定します。
  4. BIOS設定画面で設定を保存し、PCを再起動します。
  5. PCが再起動すると、USBメモリからOSをインストールすることができます。

PCでは起動時に特定のファンクションキーを押すと、起動デバイスを指定できる画面が表示できる場合が多いです。
下は、D582/FWのBIOS画面です。

USBメモリが、上の例では「Hard Disk: SanDisk」と認識されています。
USBメモリを指定して、[Enter]で起動します。

Windows 11をインストールしよう

USBメモリからの起動が成功すると、上のマークが表示されます。

確認して[次へ]。

メニューから[日本語キーボード]を指定し、[次へ]をクリックします。

[Windows 11 のインストール]が選択されていることを確認します。
[I agree …]にチェックします。[次へ]。

[プロダクトキーがありません]を選択します。デジタルライセンス有効な場合は、ここでの入力は不要です。

Proエディションが動作していたPCは、デジタルライセンス認証でもProが選択できます。Windows 11 Proを選択します。

[同意する]をクリック。

OSがインストールされているSSDなど、ほかの用途で使用していたSSDの場合は、パーティションを[削除]するなどして領域を確保します。
[次へ]。

上の準備完了画面から[インストール]をクリックします。

インストール実施中の画面です。

上の画面を経て、何度か再起動が行われます。
しばらく待つと、次の画面が表示され、インストールは完了します。
次回のログイン時に、パスワードの初期入力が求められます。

上のように24H2が表示されたでしょうか?

「winver」コマンドの実行結果です。24H2に更新されています。

「システム」の情報です。

さいごに

中古PCにSSDとメモリを「ちょい足し」し、Windows 11リリース24H2を実質無料でインストールする方法について紹介しました。
古いPCも工夫次第で、まだまだ快適に使用できます。
皆さんも、片隅に放置されているPCに復活のチャンスを与えてあげてはいかがでしょうか?